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2025年 3年次 「リノベーション演習 ―市街地コース― 」 優秀作品

最優秀の立花さんの作品は、道路拡幅により風景が激変するエリアに対し、建築が何をできるかを問うものだ。
今まで家と家の間に隠れていた御殿堰を再生し散歩道にしたり、道路拡幅で生まれた残地を発見しちょっとした居場所を設えたり。それらはささやかではあるが、雑になってしまった街の風景を再び人間の感覚に引き寄せている。
確かな観察力と、繊細な気づき、押し付けず控えめだけれど、そこに佇む人々の感覚に寄り添うデザインが街に散らばっている。機能があるようでないような。でも、歩くことや思索することを誘発する。精神に作用する小さな建築群である。

同じく最優秀の木村くんの作品は、空間が楽器になっている。空き物件の中に複雑に足場が組まれ、それはジャングルジムのようでもあり、立体的な迷路のようでもあり、彫刻のようでもある。人々は足場を叩き、音を鳴らし、リズムを刻む。名作ミュージカルの「STOMP」の舞台装置を思わせる。
機能がない、というわけでもなさそうで、足場にいろんなものを引っ掛けることにより、人々は、工作的にこの空間を使うこともできる。ただここが誘発する行為は多様で、特定の目的に向かった空間ではない。
定義しにくいことこそ、この建築の魅力だと思う。(馬場)